論文掲載

同志社大学心理学部助教(慶應義塾大学グロバールリサーチ共同研究員)津田裕之さんとの共著論文が出版されました。
Tsuda, H., & Kawabata, H. (2023). materialmodifier: An R package of photo editing effects for material perception research. Behavior Research Methods, 1-18.

https://link.springer.com/article/10.3758/s13428-023-02116-2

本論文では、写真編集効果を自動で行うRパッケージを紹介する。具体的には、Boyadzhievら(2015)が提案した画像処理アルゴリズムのR実装である。このソフトウェアでは、顔のシミやシワを強調したり、肌を滑らかにしたり、果物の光沢を強調したりするなど、写真に写った物体の外観を操作することができる。物体の特定の表面特性(光沢や粗さなど)を定量的に制御する再現性の高い方法を提供し、知覚の基本的なメカニズムから顔や物体の美的評価まで、物質知覚に関するテーマに関心を持つ研究者にとって有用である。本手法の機能、使い方、アルゴリズムについて説明し、行動評価実験の結果を報告し、心理学研究への有用性と限界について議論する。パッケージはCRAN経由でインストールでき、ドキュメントとソースコードは https://github.com/tsuda16k/materialmodifier で公開されています。

研究プロジェクト【JST COI-NEXT 藝大共創拠点が本格型に昇格しました】

2021年度より,東京藝術大学が主幹となり,様々な大学/研究機関,企業,行政等と協力し,展開するプロジェクト,JST共創の場『「共生社会」をつくるアートコミュニケーション共創拠点』(https://kyoso.geidai.ac.jp PL: 伊藤達矢)に参加しておりましたが,2023年度4月より本格型に昇格しました。https://www.jst.go.jp/pf/platform/file/2023/2023_kyotengaiyou_2105.pdf

新規論文【アート作品を見る際の眼球運動の文化的多様性】

ウィーン大学との共同研究による研究論文が刊行されました。日本人とヨーロッパの人とでは,美術作品を見るときに上下方向の眼球運動をよく用いるが,ヨーロッパの人の場合には横方向(左右方向)の眼球運動をより用いることが明らかになりました。このことは日本と欧州とでの文字の読み書きの習慣と関連があるのかもしれないという指摘です。

Brinkmann, H., Mikuni, J., Dare, Z., Kawabata,H., Leder,H., & Rosenberg, R. (2023). Cultural Diversity in Oculometric Parameters When Viewing Art and Non-Art. Psychology of Aesthetics, Creativity, and the Arts. Advance online publication. https://dx.doi.org/10.1037/aca0000563

上のリンクから論文はフリーで入手できます。

Abstractの日本語訳 パタンA
芸術は文化的に多様であり、視聴者も同様です。これまで、文化間の芸術作品の違いは美術史家たちの主要な関心事でしたが、文化間の芸術認識の相違(例えば、異なる視覚文化に馴染んだ人々が芸術作品をどのように異なって見るかどうか)はこれまであまり研究されていませんでした。いくつかの美術史的理論は、文化の特定の要素(例えば、文字体系)が芸術作品の鑑賞方法の違いにつながるかもしれないと主張しています。しかし、文化的な知識や実践が芸術認識にどの程度影響するかはまだ明らかではありません。本研究では、オーストリアと日本の参加者(両国は文字・読書体系が大きく異なります)の眼球運動パターンを比較し、ヨーロッパ美術、日本美術、日常の写真を見る際の違いを調べました。その結果、両グループ間に有意な違いが明らかになりました。日本人参加者は、芸術作品を見る際に縦方向のサッカードが多く、一般的に下向きのサッカードも多かったのに対し、水平方向のサッカードの回数には有意な違いはありませんでした。オーストリア人参加者は、水平方向のサッカードが大きく、縦方向のサッカードの振幅には有意な違いは見られませんでした。また、両グループは、各画像を12秒間見る際のサッカード振幅と注視時間のばらつきにも異なるパターンがあり、これは局所的な視覚行動と全体的な視覚行動に関連しています。おそらくそれらの違いは、読み書きのシステムに関連しているだけでなく、絵に対する異なる認知的期待にも関連しています。それは、日本の伝統における画像と書道の同等性と、ヨーロッパのルネサンスの伝統において現実の窓のような遠近法の視点で絵を作成し見る習慣です。(Chat GPT4による翻訳)

Abstractの日本語訳 パタンB
芸術は文化的に多様であり、その鑑賞者もまた多様である。文化圏を超えた美術品の差異は美術史家の大きな関心事であったが、文化圏を超えた美術品の認識の差異(例えば、異なる視覚文化に親しんだ人々が美術品をどのように見るかが異なるのか)については、これまでほとんど研究されてこなかった。美術史の理論では、ある種の文化要素(例えば、文字システム)が美術品の見方の違いにつながる可能性があると主張するものがある。しかし、文化に根ざした知識や習慣が美術品の鑑賞にどの程度影響するかは、まだ明らかではない。そこで本研究では、文字や読書のシステムが異なるオーストリアと日本の参加者が、ヨーロッパ美術、日本美術、日常写真を鑑賞する際の眼球運動のパターンを比較しました。その結果、両者の間には大きな違いがあることがわかった: 日本人は、美術品鑑賞時に垂直方向のサッケードを多く行い、下方向へのサッケードも多く行ったが、水平方向のサッケードの回数に大きな差はなかった。オーストリア人参加者は、水平方向のサッケードをより多く行ったが、垂直方向のサッケードの振幅には有意な差は見られなかった。また、両群とも、各画像の12秒間の視聴時間におけるサッケードの振幅と固視時間の分散に異なるパターンが見られ、これは局所的な視聴行動と全体的な視聴行動に関連している可能性がある。これらの違いは、読み書きのシステムに関連している可能性もあるが、絵に対する認知的期待の違いもある。日本の伝統では、画像と書道が等価であるのに対し、ヨーロッパのルネッサンスの伝統では、絵は現実を見る窓状の透視図として作り、見る習慣がある。(DEEPLによる翻訳)

経済産業省「アートと経済社会について考える研究会」

2022年6月より,経済産業省に設置された新しい研究会,「アートと経済社会について考える研究会」の委員に就任しました。

経済産業省は、アートの持つ経済産業的意義を確認しつつ、アート領域への投資・需要を拡大し、アートと経済社会の循環エコシステムを構築するため、「アートと経済社会について考える研究会~クリエイティブ産業政策の新展開~」を新たに設置しました。

https://www.meti.go.jp/press/2022/06/20220627005/20220627005.html

開催報告 基礎心理学フォーラム「基礎心理学と人類史研究との接点」

2022年6月18日に,日本基礎心理学会2022年度第1回フォーラム「基礎心理学と人類史研究との接点」を慶應義塾大学三田キャンパスにて開催しました(Zoom配信とのハイブリッド形式)。大塚幸生さん(京都大学)は「心理課題を用いた認知マップの作成および文化人類学の資料との関連性の検討」,山本真也さん(京都大学)は「できるけどしないチンパンジー」と,お二人のご講演はオンサイトで,平川ひろみさん(鹿児島国際大学)は「考古学からみた土器製作者のモーターハビット」はオンラインでのご講演を行って頂きました。また指定討論者には田谷修一郎さん(慶應義塾大学)をお迎えして行いました。なお,川畑は本企画の代表者で司会等を行いました。本シンポジウムは,基本基礎心理学会,新学術領域 研究『出ユーラシア』,三田哲学会の共催で開催しました。

Prof. Zeki講演会の開催のご報告

2022年5月16日(月),慶應義塾大学三田キャンパスにて,慶應義塾大学文学部客員教授としてご来訪中のロンドンユニバーシティカレッジのSemir Zeki教授をお迎えして講演会を開催しました。”The Bayesian Updating of Aesthetic Judgments”と題されたご講演を頂きました。なお,本講演会は,慶應義塾大学小泉基金の補助を得て開催されました。