研究員(特任研究員,特任助教)

現在,当研究室では1〜2名のポスドク研究員(特任研究員,特任助教等)を募集しております。決まり次第,募集を終了します。

当研究室は,広く美や感性,創造性に関する心と脳の働きを研究しています。人工物/非人工物,有形/無形,かかわらず人が外界の対象に対して美や好み,印象等の感性経験のメカニズムや,人工的にモノや経験を生み出していく・創造する行動や脳の働き,美意識や感性的な個人特性,さらには感性的な心や脳の働きが人のウェルビーイングに与える影響やアートの心身への効用などについて研究しています。
アプローチとしては,実験心理学や認知神経科学,データサイエンス(調査研究や深層学習や形態分析等,統計的モデリングを含む)の手法に加え,最近はワークショップリサーチやインタラクティブアート,VR・MR研究等も行っています。

モノ作りのプロセスや楽器演奏などの創造性研究に関する心理実験や脳波研究,fMRI研究等に従事頂きます。
研究についてプロジェクトを担当し,プロジェクトメンバーである学内外の研究者,大学院生や学部生と研究を進めて頂きます。
また,論文執筆・投稿や学会発表,関連研究会での発表を行っていただきます。

このような分野に興味があり,主体的に研究を進める意欲を持つ方を求めています。

詳細は(こちら)のリンクをご覧下さい。

CCNJ現代芸術の国際展部会 クロストーク:「アートが心にもたらす効果」(終了)

2024年5月23日に開催された,創造都市ネットワーク日本(CCNJ)ゲイン大芸術の国際展部会のイベントに出演し,先日実施した横浜トリエンナーレでの効果検証についての速報値を含め,最近のアートの心への効果やアート鑑賞の行動についての報告を行いました。

過去にはなりますが,イベントの詳細については(こちら)のリンクをご覧下さい。

横浜市立大学COI共創拠点 Minds1020Labにおける横浜トリエンナーレ研究については(こちら)のリンクからもご覧頂けます。

論文出ました

近頃出版された論文について挙げておきます。

  • Zhou, Y., & Kawabata, H. (2023). Fluent Processing Amplifies Affective Judgments. Experimental Psychology, 70(5), 285–293.
  • 三好香次, 川畑秀明 (2024). ダンスの美的評価に及ぼす鑑賞者の熟達性の影響 ——総練習時間および身体的再現可能性認知に着目して——. 日本感性工学会論文誌, TJSKE-D. オンライン版.

論文がでました(幾何学的形態分析と深層学習を用いた計算論的アプローチによる顔の魅力要因の検討)

当研究室D2の佐野君が第1著者の論文がでました。深層学習を用いた顔画像情報による魅力推定と顔形態解析を用いた魅力指標とを融合的に扱ってみたというものです。色々なところに応用できそうです。以下のリンクから入手できます。https://www.nature.com/articles/s41598-023-47084-x

Sano, T., Kawabata, H. A computational approach to investigating facial attractiveness factors using geometric morphometric analysis and deep learning. Sci Rep 13, 19797 (2023).
https://doi.org/10.1038/s41598-023-47084-x

日本語訳==
顔の魅力を構成する特徴については、数多くの研究がある。近年、先行研究の仮説に頼らずに顔の特徴を調べることができる計算論的研究が注目されている。このアプローチでは、多くの顔刺激を用い、幾何学的形態計測やディープラーニングなどの手法を用いて、顔の身体的特徴と魅力との関係をモデル化する。しかし、それぞれの手法を用いた研究は独自に行われており、技術的・データ的な制約がある。また、実際の魅力知覚の要因を計算手法のみで特定することは困難である。本研究では、幾何学的形態計測と印象評価により、魅力知覚に重要な形態特徴を検討した。 さらに、ディープラーニングを用いて重要な顔特徴を網羅的に解析した。その結果 その結果、目に関連する領域が魅力の判断に不可欠であること、また、異なる人種グループ 人種によって、形状や肌情報が魅力に与える影響が異なることが示された。本研究のアプローチは 本研究で用いたアプローチは、普遍的で多様な顔の魅力の特徴を理解することに貢献する。心理学的知見と工学的応用を拡大するものである。

新しい論文「目は語る: AIアートに対する暗黙の態度の評価」

i-Perception誌に,研究室の新しい論文が出ました。
https://journals.sagepub.com/doi/full/10.1177/20416695231209846

Yizhen Zhou and Hideaki Kawabata (2023). Eyes can tell: Assessment of implicit attitudes toward AI art. i-Perception, 14(5), 1–14. DOI:10.1177/20416695231209846journals.sagepub.com/home/ipe
【概要 Abstractの日本語訳】
人工知能(AI)の進歩により、機械の能力は著しく向上した。芸術創作のような人間特有の能力は、今やAIによって挑戦されつつある。最近の研究では、人間が制作したアート作品とAIが生成したアート作品に対する人々の態度を調査・比較している。その結果、後者には否定的なバイアスが存在する可能性が示唆されている。しかし、これらの先行研究では、このバイアスの程度を調べたものはない。本研究では、AIアートに対するバイアスが暗黙のレベルで見られるかどうかを調査する。AIアートに対する視聴者の態度は、視線追跡測定と主観的美的評価を用いて評価した。視覚的注意と美的判断は、人間が作ったものとAIが作ったものに分類された作品間で比較された。その結果、AIが作成したアート作品を識別することは困難であったが、AIアートに対する暗黙の偏見が見られた。参加者は、人間が作ったと思われる絵画をより長く見ていた。主観的評価において、絵画の分類による有意な影響は見られなかった。これらの結果は、人間とAIの芸術は同様の美的価値を持っていると認識されているかもしれないが、AI芸術に対する暗黙の否定的偏見が存在することを示唆している。AIは創造的な仕事をこなせるようになったが、芸術的創造性は依然として人間の特権であると考えられている。

オンライン講演会のお知らせ

川畑研究室では,創造性研究や美術鑑賞研究でご活躍の,聖心女子大学の石黒千晶先生に,下記の様なご講演をオンラインで頂きます。 ご興味のある方は,ぜひ川畑(kawabata@flet.keio.ac.jp)までご連絡頂ければ,Zoom参加のURLをご連絡します。

石黒千晶(聖心女子大学・専任講師)
タイトル:「対話型鑑賞の効果を測る」
日時 2023年9月28日(木)16:00~17:30
場所 Zoomによるオンライン形式
共催:三田哲学会/JST共創の場拠点プログラム/論理と感性のグローバル研究センター

(講演会の概要) 本講演会では,美術鑑賞および美術教育の新しい方法とされる対話型鑑賞に関する近年の心理学における動向についてお話し頂きます。

対話型鑑賞は世界的に学校・美術館教育で用いられてきており,その評価に関しては対話型鑑賞は感想文などの言語データをもとにして,その教育効果が示唆されてきた。近年では,対話型鑑賞中の視線などの生理データを利用した鑑賞過程の理解も進んでいる。本講演では,対話型鑑賞の教育効果を視線のデータを元に検討した研究を紹介する。また,対話型鑑賞が学校の教室場面で行われる場合と、美術館で行われる場合の教育効果の違いについても知見を紹介しながら議論する。

論文(対称性への選好について)

ウィーン大学との共同研究の成果が論文として出版されました。
Symmetry as an Inter-Cultural Feature Constituting Beauty: Implicit and Explicit Beauty Evaluation of Visual Symmetry in Japan

以下はDEEPLを用いた自動翻訳

対称性は美的嗜好を予測する上で最も重要な視覚的特徴の一つとして認識されており、美の判断における普遍的特徴の可能性が議論されてきた。最近の研究では、芸術の専門家が明示的な評価において非対称な刺激を好むことが示され、芸術的訓練が対称性への選好を修正する可能性が示唆された。本研究では、抽象的な視覚パターンの対称性に関しても、文化的な慣れが美の判断に影響を与えるかどうかを検討する。日本の芸術やデザインにおいて伝統的に非対称性が好まれることを踏まえ、日本人参加者(N = 31)が対称的な抽象的視覚パターンを非対称的なものよりも美しいと評価するかどうかを、明示的課題および暗黙的課題(IAT)において検証した。その結果、日本人参加者は左右非対称な刺激よりも対称な刺激の方が明らかに美しいと評価することがわかった。我々は、芸術的訓練とは対照的に、非対称性に対する文化的慣れは、非対称性に対するより高い美の評価を引き起こさないと結論づけた。

論文掲載

同志社大学心理学部助教(慶應義塾大学グロバールリサーチ共同研究員)津田裕之さんとの共著論文が出版されました。
Tsuda, H., & Kawabata, H. (2023). materialmodifier: An R package of photo editing effects for material perception research. Behavior Research Methods, 1-18.

https://link.springer.com/article/10.3758/s13428-023-02116-2

本論文では、写真編集効果を自動で行うRパッケージを紹介する。具体的には、Boyadzhievら(2015)が提案した画像処理アルゴリズムのR実装である。このソフトウェアでは、顔のシミやシワを強調したり、肌を滑らかにしたり、果物の光沢を強調したりするなど、写真に写った物体の外観を操作することができる。物体の特定の表面特性(光沢や粗さなど)を定量的に制御する再現性の高い方法を提供し、知覚の基本的なメカニズムから顔や物体の美的評価まで、物質知覚に関するテーマに関心を持つ研究者にとって有用である。本手法の機能、使い方、アルゴリズムについて説明し、行動評価実験の結果を報告し、心理学研究への有用性と限界について議論する。パッケージはCRAN経由でインストールでき、ドキュメントとソースコードは https://github.com/tsuda16k/materialmodifier で公開されています。